「名探偵コナン 紺青の拳」の良かったところと思ったところ
「劇場版名探偵コナン 紺青の拳」観てきました!!
もう何か月も前の話だけど!!!
劇場版第23弾ということで、今回のメインキャラクターは怪盗キッドと京極真。
怪盗キッドメインは「業火の向日葵」以来4年ぶり6回目。甲子園みたいですね。
京極真は今回初登場。
さらに、映画コナン史上初の海外が舞台!
もともとシンガポールは原作の方で連載1000回記念でやる予定だったけど、青山先生が映画の方が映えるんじゃないかということで、映画に話が譲ったそうです。
監督は永岡智佳さんと初めて女性が担当。
映画コナンの監督は7作で交代という流れがあり、前作「ゼロの執行人」で立川監督が初めて担当したが、どうやら今回は1作で交代のようです。
永岡さんは「絶海の探偵」から演出を務めていたようで、もともとコナンに関わりがあって今回の話に合いそうだから抜擢されたという感じですかね。
「から紅の恋歌」で助監督を務め、「ゼロの執行人」に関わってないのは今作のための準備だったのでしょう。
もしこの方式が今後採用されるなら、1作作るのに2年かけられるのでクオリティに期待が持てそうです。
この辺は後で書くけど、「から紅の恋歌」はコナンらしいラブコメとしてほぼほぼ完ぺきだったので、まさに今作にぴったりです。
とまあ、コナンをよく知っているスタッフ中心に作られたためか、一言で言ってめちゃくちゃコナンらしい作品です!
「ゼロの執行人」がコナンである必要が無かっただけに、ああ、いつものコナンが帰ってきたなってある意味安心して見れました。
ちゃんと事件が起きて、ラブコメしながら謎解きをして、最後は「らああああああああああん」「新一…」でトンデモアクション。
これら全てを海外仕様にスケール一万倍にしたって感じで、まあ、なんというか、大笑いでした。(褒め言葉)
まず何といってもね、シンガポールの景色がすごい!
さすがに海外を舞台にしてるだけあって気合の入り方が違いますね。
怪盗キッドが自由に飛び回るのはシーンはもうこれだけで映画代の元を取ったとも言えるレベルです。
マーライオンやマリーナベイサンズといった観光地もしっかり出てくるからね、観た後シンガポール行きてえ~~~~ってなっちゃうんだよ。
これはシンガポールという舞台の魅力もあるけど、何より映画コナンの作画のクオリティがここ数年で各段に上がってるのもあると思います。
キャラクターの動きとか表情の微妙な変化を出すようになったし、カット割も増えてるしでね、まあどんどん繊細に豪華になっていって金かけて作ってんな~ってなるのですよ。
あと「ゼロの執行人」から携わるようになったloundrowさんというイラストレーターのイメージボードの力は大きいですね。
埃に反射する光だとか、夜の煌びやかなビルの光だとか、とにかく光を意識した背景づくりが今までのコナンには無かったもので非常に新鮮だった。
このあたりはパンフレットにイメージボードが載っているのでぜひ見てもらいたいです。
20年以上たった今でも進化し続ける映画コナンですが、ラブコメという初期からのテーマはしっかりと今作では残っているから安心して見る事ができました。
「名探偵コナン」に出てくるヒロインたちというか、青山ヒロインの特徴は強い女性だ!というとこだと思うんですよ。この場合の強いは、肉体的だけじゃなくて精神的にもね。
女の子らしさはあるんだけど、しっかりと芯を持っているから一人の人間として非常に魅力的に見えます。
「ゼロの執行人」は蘭が弱い(というか空気)のでただのヒロインになっていたからこのあたりがちゃんと出せてなくてう~んって感じだったけど、さすが大倉さん、しっかりと書いてきてくれました。
「から紅の恋歌」の時の和葉もめちゃくちゃ強かったし、今回の園子も本当に強くてたくましい女の子だなあって感じでどんどん惹かれました。これ見て園子に惚れない男はいるのか!?
大倉さんは現役で青山ラブコメに最も近いものが書ける人だと思いますよ。
そして、コナンをよく知っている永岡さんはこれに呼応するかのように作品を作っているんです。
パンフレットのインタビューでは「キャラクターをもやもやさせたい」と言っておりまして、まあ今回、園子と京極がラブ的にピンチに陥るというかちょっともやもやした関係に追いつめられるんですよ。こういう追いつめられたときにこそ、芯の強さというものがね、人は見えるわけですから、描き方としては上手いなあと思うところで。
ラブコメがしっかりしているとこれだけコナンらしくなるんだなあと実感した一本でした。
さすが、青山先生が殺人ラブコメと言っているだけの事はある。
じゃあ、もう1個の重大な要素、殺人事件はどうだったのか。
こっちは、もう少しやり方があったんじゃないかなあ……
マリーナベイサンズでね、美人なお姉さんが刺されて死んでしまうという事件の始まりはなかなかショッキングで一気に引き付けられたんですよ。
その後、犯罪心理学者を名乗るまあ~~~~これまた怪しい男がですね、登場して、動機も十分!いかにもこいつ犯人だろ!って感じなんですが、アリバイがある。
さらに、怪盗キッドが盗みに来た現場で第2の殺人が起きていてキッドが濡れ衣を着せられてしまう!
この辺まではもうねめちゃくちゃ面白い事件なんですよ。完璧。
だからこそ、このまま駆け抜けて欲しかった。
この男がですね、実はシンガポールを巻き込む大きな陰謀を企んでるわけで、コナンが事件のアリバイを崩して、その陰謀を止める!
これでもう十分面白い事件として完成したと思うのだが、ちょっとこれじゃ物足りないよなあ~もう少し捻りが必要だよなあとでも思ったのか、なんとなんと、まさかもう一人実は、黒幕がいたよという展開にしてしまったのですよ。
これはね、サスペンスとしては定石だし、上手くいけば深みが出て非常に良いのですが、今回ばかりは悪手に出てました。
シンガポールを乗っ取る大いなる陰謀には、まあ海外なんで武装派テロ組織みたいのが加担してるわけですよ。本編では海賊と言ってましたが。
クライマックスのシーンは、コナンたちVS陰謀を企む班員VS黒幕と三つ巴の戦いになるわけだが、ん?このテロ組織みたいなやつらは今どこの味方についてるの??てかこいつらの目的って何??今何をめぐって争ってるの??となって結局誰が何をしたいのか頭の中で整理していたら、コナンたちがドーンと敵をやっつけて終わっちゃいました。
例えるなら、交通整理が全くできてなくて事故渋滞が発生してる状態なんですよ。
まあ目まぐるしいアクションの中でそれぞれの立場を明示して敵対関係を見やすくするのはかなり高度な技術が必要というか、それまともに出来てるのここ最近はアベンジャーズぐらいだろってレベルなんで、単純に永岡さんの実力不足が否めないです。
この辺はもっとシンプルで十分だったと思います。
あと残念だったのは、京極の成長が見られなかったところ。
京極が園子を守りたくて拳をふるうばかりに、結果的に園子が傷ついてしまうという今作最大のポイントがあるわけですが、ここで京極は果たしてこの拳は何のためにあるのかと葛藤するのです。
で、まあその弱さに付け入るのがね、悪い犯罪心理学者で、京極にこれは試練のミサンガだとかなんとか上手いこと騙して格闘を封印させるわけですよ。
まあこれがきっかけで園子ともちょっと険悪な感じになるのですが、ここで京極が人間として一つ成長するのか!!とものすごく期待したのです。
京極なりに、この拳の答えを出して、ミサンガの呪縛から解き放たれるんだろうなと期待してたわけです。
そしたらなんですか、最後のクライマックスシーン
どうしようもなくピンチになったコナンとキッドがあれだ!って言って京極のミサンガをトランプ銃で切る。その結果京極覚醒。形勢逆転。
京極真を核兵器か何かと勘違いしてるだろお前ら。
ここでもっと京極の人物描写を丁寧にやってくれたら、非常に深みのある作品になったんじゃないかなあと思うところ。京極真はコナンキャラでは珍しい、動揺したり感情で動くタイプなだけにもっと内面を描いて欲しかった。
結局キッドも京極もただアクション一辺倒でなんのために二人も出てきたの?という感じがしてしまいました。
だから、派手なアクションはキッド担当、ラブコメや人間ドラマは京極担当と分けて、最後に成長した京極真がどっかーんとアクションも含め全部持って行くとかしたら、まだ京極真、映画に出て良かったなと心から思えたかなあ。
あとまあコナンがちょーーーっとキッドに脅されて犯罪に加担していたり(キッドは犯罪者だぜ!!)して主人公としてどうなの??と思うわけですが、この辺はコナンとキッドの組み合わせが好きな人にはたまらんのでしょう。
個人的にはコナンとキッドはバチバチのライバル関係であって欲しいのですが。
最後にキッドに一矢報いるのかと思いきや、蘭がおいしいところ持って行っちゃうし、ちょっといいところなさすぎじゃないか?とは思います。
全体的にシンガポールの魅力が詰まった非常に楽しい映画でした!
来年は赤井秀一がメインという事で。
再来年の第25弾はコナンキッド平次赤井安室が揃ってアベンジャーズを結成すると予想してます。